僕の45年間―179 キブツからの絵描きさん ― 2011/09/09 21:44
そんな僕に、くだんのイスラエル氏の話はとても新鮮で刺激的でした。
僕が住んでいたブライトンにはいくつものユダヤ人経営のデリカテッセンdelicatessenと言われた総菜屋がありました。多くは家族経営でこぢんまりとした店を構えていました。
当時は、新聞販売店を除いてどこの店もキリスト教の教えを律儀に守っていたので、日曜日は安息日ということでどこの店も休みでした。しかし、ユダヤ教の安息日は金曜日なので日曜日には営業をしていました。
これはサッチャー政権になる前のことです。サッチャー政権は経済の活性化を優先し、英国国会で喧々がくがくの議論の末に日曜日の営業を禁止する法律を変更しました。それまでの日曜日の街の雰囲気は静寂そのもので文字通りの安息日だったのですが。
僕にとっては勿論ですが、日曜日に料理をしたくない家庭の女性たちにとっても大変便利な店でした。惣菜とパン類、牛乳などが主な商品で、伝統的なイギリス料理とは異なりこってりとした味付けが美味しかった記憶があります。また、パン類は今で言う全粒粉を使っていて手に持った感じがずっしりと重く食べがいがありました。
それらの店には決まって大きなポスターが貼られていました。記憶はあまり確かではありませんが、遠くを見つめて指をさしている青年男女の絵と共に「世界のユダヤ人青年よ、イスラエルに結集せよ。共にわが祖国を建国しようではないか」といった内容の文が書かれていました。
そして僕が、イスラエル建国が先住民であるパレスチナ人との衝突を招き、双方の犠牲に成り立っていることを具体的に知るまでにはまだ少し時間がかかりました。
写真はテルトロ広場 2008年11月
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