僕の45年間-1212011/05/27 22:02

 Temple Barではレスゴーさんをはじめ皆さんに親切にしていただきました。大変居心地のいい職場でした。しかし、いくら働いても日本に帰る為の切符代を貯金するまでの給料にはなりませんでした。仕方なく事情を話して辞めさせてもらいました。

 シェフのルイさんはヒマなときには僕の話し相手になってくれて僕の英語上達の助けをしてくれました。その日の新聞の記事のことやTVで話題になっていることなどをたくさん話しました。ルイさんは僕が英語の学習者であることなど気にせずに、やさしい言葉を選らんだり、ゆっくり話すなどと言う手加減はしませんでした。僕にとってそれは大変難しい面もあり、何度も聞き返すと言うこともありました。しかし、ルイさんは面倒がらず説明を繰り返してくれました。

 ルイさんはもともと調理人ではなく「I wanted to be a doctor.医師になりたかった」と話していました。資金的に学業を続ける事が出来なく断念したそうです。生活のためにいろいろな仕事をやっている中で、レスゴーさんに出会い料理の手ほどきを受けたのだそうです。もともと、料理には関心があったので丁度良かった、と話してくれました。

 ある日、彼は「I am a queer. You know Peter downstairs. He is my partner, you see. 僕はホモセクシュアルだ。知ってるだろう、下のピーター。彼は僕のパートナーだよ」と話してくれました。無論僕は分かっていました。しかし、僕にとっては大した問題ではありませんでした。その会話のときに「We may be odd ones in the society today, but we have never lost dignity of individual human beings.我われは今の社会では半端者かもしれない。しかし、人間としての尊厳を失ってはいない」と話してくれました。当時の英国社会で同性愛者が正面を向いて告白をするということはめったにありえないことでした。

 僕はその会話の中で「dignity」という言葉を学び、その意味を考えるようになりました。

 パリ行きの機内の様子2005.12
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