僕の45年間-112 ― 2011/05/15 20:48
シェフのルイさんが作ったのが無くなって、いよいよ自分が作ったレバーペーストが客に出されることになりました。これは前菜です。クラッカーやごく薄いトーストと一緒に出されます。ルイさんが「Osaka, Your liver paste is going.大坂、君のレバーペーストが出るぞ」と声を掛けてくれました。 僕は内心どきどきしていました。「美味しくない」という苦情が出たらどうしようかと思いました。幸いにもウエイトレスがさげて来た皿は食べ残しがなくきれいでした。僕はほっとしました。ルイさんも喜んでくれました。しかし、ひとり、面白くなさそうな態度をとっているのがいました。
自称セカンドシェフ(副料理長)の若い男ジェフさんは半ばふてくされて、僕に八つ当たりをするのです。狭いキッチンで僕が皿洗いをしているとあれやこれやと急ぎもしない鍋や皿を洗えと言いつけるのです。本来なら自分が作ってもいいはずのレバーペーストを新米で外国人である皿洗いが作って、それが好評だということが面白くないようでした。
それが原因かどうかは知る由もありませんがある日、ルイさんと大喧嘩をして、翌日から出勤しなくなってしまいました。僕はルイさんに「Did I do anything wrong?僕は何か悪いことでもしましたか」と訊くと、「君のせいじゃないよ。ジェフは仕事が遅すぎるから叱ったらこの様だよ」と説明をしてくれました。
数日後、経営者のレスゴーさんに呼ばれて事務所に顔を出しました。机がひとつしかない小さな窓の無い事務所に恰幅の良いレスゴーさんが座っていました。こういう場面になると僕はどきどきします。明日から来なくても良いといわれるのではないかと、それだけが心配でした。
「You work very hard. I like that. Now, would you like to do two jobs at the same time?君は良く働く。そういうのが好きだよ。ところで同時に二つの仕事をやらないか」というのです。自称セカンドシェフが出勤しなくなったので彼の仕事もやってくれないかということでした。「With 50% raise.給料は50%増しだ」とも付け加えました。
写真はパリの地下鉄駅バスチーユ(Bastille)駅。地下鉄ですがセーヌ川にまたがってホームが建設されています。
最近のコメント