僕の45年間-1182011/05/23 23:55

 いつもでしたらランチが終わったら清掃をして自分のフラットに帰って、夕方出直しをするのですがその日は残業となりました。僕は心の中で給料がいくらかでも増えることを期待していました。何しろ、授業料とフラットの家賃を払うといくらも残らない生活をしていましたから。

 仕込み場の棚には小瓶がたくさん並んでいました。これらは香辛料だと見当をつけて味見をしました。中には薬のような味がするのもありあわてて水を飲んだりしました。ようやく、もうそれが何と言う香辛料であったかは覚えていませんが、2種類ほど選び、小分けしたネギスープに入れて試してみました。
 事務所にいるレスゴーさんへ持って行き、味を試してもらいました。彼の表情はにっこりと笑っていました。僕はほっとしました。

 それ以来、レスゴーさんはいろいろな料理の仕込みを、手順だけを説明して作業は僕にやらせるようになりました。誰にも干渉されず、創作をする感じで楽しい作業でしたが、お客さんの食べ終えた皿が戻ってくるまでは安心できませんでした。いつもいつも皿がきれいに空になって洗い場に戻ってくるとは限りませんから。

 ヘッドウエイターのミシェルさんは「What do you want me to sell today. 今日は何を売って欲しいんだ」と声を掛けてくれました。彼はやはり一流のウエイターで自分の客を持っていました。その客に僕が仕込んだ料理を積極的に勧めてくれたのでした。

 シェフのルイさんは自分の仕込み分、仕事量が少しは減ったので喜んでくれました。ときどきシャンディーをご馳走してくれました。

 写真はパリからブラッセルへ電車で行ったときの朝食です。2005.12
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