僕の45年間-1162011/05/19 20:14

 土曜日の昼食のときでした。レスゴーさんが大きな声で事務所から僕を呼びました。めったにあることではありません。僕は何事かと思い急いで顔を出しました。曰く、今日は警察署の偉い人たちが数人来るから君は彼らが来たらここの事務所に静かにしていろ。お互いに面倒なことにならないようにしよう、というのでした。
 丁度、忙しくなり始めたころです。ヘッドウエイターのミッシェルさんがキッチンに来て「Go,go Osaka」と合図をしてくれました。僕はルイさんに「I have to hide in the office for a while.事務所にしばらく隠れるから」と言ってそそくさと消えました。


 当時、外国人は地元の警察署に登録をして所在を明らかにしなければなりませんでした。ヴィザの更新をしたときにも同じでした。
 僕のヴィザは学生ヴィザで有効期限内でしたがアルバイトができる時間に制限がありました。記憶が定かではありませんが週に15時間までは許可されていたと思います。しかし、僕は午前中に授業を終えて昼食の時間帯に3時間、夜は5時間くらい働いていました。法律では本人と雇用主の両方が罰せられますからレスゴーさんにしても違反が見つかるのは面倒なことでした。
 違反者は24時間以内の国外退去処分になりますから僕は何としても避けたいことでした。


 しばらく事務所でじっとしていたらルイさんが「Osaka, come out. It’s ok now.大坂、出て来い。大丈夫だから」と叫んでくれました。キッチンは汚れた皿や鍋の山でしたが僕は安堵感のほうが強くて気になりませんでした。


 僕が酒を飲めないことを知っているルイさんは階下のバーにシャンディー*を注文してご馳走をしてくれました。僕はそれを一気に飲んで一息入れ、皿洗いに取り掛かりました。
 

 *シャンディー「shandy」はビールとレモネードを半々に混ぜた飲み物


 写真はパリのリヨン駅
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