西窪愛子写真展2014/04/02 14:25

僕は写真という表現方法でここまで昇華された作品を目にしたことはありません。

美術作品を何と定義するかは僕にはよく分かりません。しかし、今回拝見した西窪さんの作品は多分、その領域のもののように思います。

大雑把にいえば、どんよりとしたパリの空やひと気のない公園、煙突が突き出た屋根などの風景が題材です。それらが西窪さんという写真作家の手にかかると一変するのです。

よく言われる言葉に「写真は引き算」というのがあります。それくらい写真はシャッターを押した瞬間にもろもろを画面に取り込んでしまう性質を持っています。それを活用するのもひとつの表現方法ですが、西窪さんはその真逆を試みているのです。
写り過ぎるのを如何に引き算をして、主題を浮かび上がらせ、普遍化するかに腐心し 、見事に成功していると思います。稀有な感性と旺盛な探究心故にかと思います。

プリント資材には紙、キャンバス生地、アクリル板が使われています。乳剤は自分でプリント資材に塗布しています。
このやり方が方法論の試みに終わることなく、カメラで捉えられた具象的な写真が、見事な普遍性のある作品に結実しているのです。

合わせて、写真の特徴である比較的容易に印刷でき、同じものを複数枚作ることができるということを完全に拒否している取り組みであることも付け加えるべきだろうと思います。

アクリル板には不透明なと透明なのが使われています。透明なアクリル板の作品を透過して奥の作品を見る、という妙をも楽しめると思います。

作品の見栄えは額縁にも影響されます。僕が拝見している過去二回の展同様、今回も旭川のラボ・フューズが協力をしています。作品と額縁が、今風にいうコラボしています。

西窪 愛子 個展
期間:2014年 4月2日~14日
会場:札幌市中央区南9条西6丁目「GALLERY SOU(創)」
http://sou.agson.jp/about.html

コメント

_ 紫庵 ― 2014/04/12 09:56

初めまして、ある項目を検索した結果、こちらにたどり着きました。
4/10道新夕刊の記事を見て、私も昨日西窪さんの写真展に行ってきました。
以前から、同様の技法を使い作成した写真を何回か見ていますが、それらの写真(もどき)とは異なった作品群を興味深く拝見しました。
大坂さんが仰るとおり技法として昇華されていると思います。
と同時に写真としての質も十分ありますし、さらにモノクロームでこその表現にもまた大変に好感を持てました。
最近の、ウケ狙いで作られた中身の無いモノクロームの写真とは段違いの、立派な「作品」の数々でした。
次の写真展に期待が持てます(^^)

_ 大坂忠 ― 2014/04/12 12:20

紫庵 さん、はじめまして。投稿をありがとうございます。
西窪さんの一ファンとして大変うれしく思います。
紫庵 さんのサイトを少しだけ拝見しました。
素晴らしい作品群でプリントで拝見してみたいという衝動に駆られます。
お時間があるときに時どきここにお立ち寄り頂ければ嬉しいです。

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