裁判の傍聴-42014/04/13 21:39

 若い弁護士は「打ち合わせと違うじゃないか」とでも言いたげな目で被告人を一瞬見つめました。裁判長はその様子を見逃すことなく、口元で笑ったような、困ったような感じの表情をしていました。

 裁判官は被告に「何故、この条例があり、あなたは違反者として逮捕されたのか分かりますか」と心もち席から身を乗り出して問いました。被告人は「それは・・・、警察に迷惑をかけたからだと思います」と答えました。
 裁判長は「それでは少し説明をします。あなたは、『札幌市公衆に著しく迷惑をかける風俗営業等に係る勧誘行為等の防止に関する条例』に違反したのです。そして、その条例が作られた目的は『公衆に迷惑をかける風俗営業等の勧誘行為等を防止して、市民及び観光客等の安全で安心な生活環境を確保すること』なのです。

僕は被告人の背中を見ながら、被告人は条例の名称やそれが作られた趣旨などはどうでもいいと思っている風に感じました。

 刑事事件の被告人として法廷に立つということは小さいころの生活環境から親兄弟や友人知人のこと、学歴のこと、仕事のこと、経済状態など「私たちはあなたを理解しようとしている」という名目で白日の下にさらされ、丸裸になるようなものです。もしかしたらそれ自体がいわゆる社会的制裁を意味するのかもしれませんが普通の人間には耐えがたいことだと思います。しかし、今回の被告人は妙にさばさばしていている風でした。

 裁判長は「最後に、被告人は何かこの法廷で言いたいことはありますか」と尋ねました。被告人は何の躊躇もなく、瞬時に「ありません」とはっきり答えました。
(次回が最後です)

 写真は札幌控訴院(裁判所)。昭和48年(1973)ころまで裁判所として使われていたようです。現在は札幌市資料館として使われています。当時の法廷が再現されています。現在の法廷と調度品こそ違いますがそれぞれの位置関係は全て同じです。
 裁判官席に向かって右に弁護人席、左に検察官席となっています。
http://www.s-shiryokan.jp/floor/01-3sapporo.htm
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