僕の45年間-1662011/07/23 23:58

 投函してから1ヶ月以上もたったと思います。季節は11月に入り寒くなってきていました。突然というのはおかしいのですが、緊張が無くなった頃にようやく裁判所から手紙が届きました。裁判の日程が記されていて、自己弁護で裁判を受けることを許可する旨のことが書かれていました。そして、裁判は2週間後の午後2時に開かれるとありました。

 僕は改めて緊張感に襲われました。その日は土曜日でしたので一人で自分の部屋にいましたから誰とも話すことが出来ず、何度も手紙を読み返し、何とかなるさと言い聞かせ気持ちを静めました。

 裁判の日はじきにやってきました。僕は朝から落ち着かなく部屋の中をウロウロしていました。英語の辞典を持って言った方がいいだろうかとか、服装はどうしたらよいだろうかとか余計なことばかりを考えていたように思います。

 朝から小雨模様で大変寒い日でした。どっしりとした石造りの裁判所に着いたのは僕の裁判が始まる小一時間も前でした。事務官に案内をされ、一階奥の通路にあった木のベンチに座って待つように言われました。 事務官はその通路の先が法廷だと教えてくれました。いよいよか、と思いました。僕は時計ばかりを見ていました。予定の2時までの時間が異様に長く感じました。
 どんな手順で進行するのだろうかとか、どんなことを質問されるのだろうかとか、全く分からない状態で不安と恐れさえ強く感じました。

 法廷のドアが開き、ダークスーツを着た数人が難しそうな顔をして出てきました。僕の前の裁判が終ったようでした。
続いて、警察官の制服を着た一人が僕のベンチの前で足を止めました。
「Are you Mr. Tadashi Osaka?あなたは大坂忠さんか」
「Yes, I am.はい、そうです」
「Please follow me.私に付いて来てください」
僕の心臓は口から飛び出しそうでした。

写真はパリの北駅の鉄道員。2008年11月。
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