裁判の傍聴-3 ― 2014/04/12 15:57
弁護士:家賃滞納でアパートを退去させられて以来、あなたはどこで寝泊まりをしていましたか。
被告人:えー、知り合いの社長さんに倉庫の片隅を使っていいよって言われたので、そこに。
弁護士はその社長さんが法廷に来ていないか傍聴席を改めて見渡しました。残念そうな表情を少し見せました。そして、弁護士は被告人が起訴された後にこの奇特な社長さんに会って話をしたこと、脳梗塞を患って歩行が少し不便であるにも関わらず、被告が何らかの形で釈放されたら、自分が九州の実家まで連れて行き本人の実兄に身柄を預けるつもりであること、また、その際の旅費はすべて社長さんが負担する用意があることなどを話したと裁判官に向かって説明を始めました。
弁護士:その知り合いの社長さんにとって、あなたの世話をすることは何らかの利益になることがありますか。
被告人:いいえ、ありません。損はしても社長さんの得になることは一つもありません。ワシにはこの人のためには何もできませんから。
僕はなるほどと思いました。弁護士が強調したかったのは、被告人には一銭の得にもならないのに、それでも世話をしようという人がいること、また、九州の実家に戻り生活を立て直すチャンスがあるから刑量に情状酌量をしてほしいということだったのです。
弁護士:九州へ戻ったら、お兄さんに会って当面の経済援助をお願いするつもりですね。
被告人:そんなこと、分かりません。40年以上も会っていないのに・・・・。
弁護士:・・・・。
僕は、せっかく弁護士が有利な方向に誘導をしようとしているのにと思いました。また同時に被告は少なからず経験則から大した刑にならないとでも思っているのかなとも思いました。
写真は裁判物の映画としては傑作中の傑作であると僕が思っている「十二人の怒れる男(Twelve Angry Men)」のシーンです。
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