僕の45年間ー98 ― 2011/02/27 20:38
僕は力を振り絞って転居先を聞きました。応えは簡単でした。「I don’t know.」でした。僕は一瞬、ふらふらとなりました。僕の英国での唯一の情報源が消えてしまったのでした。万事休すとはこのことだと思いました。
僕は気力を振り絞って「I see. Thank you」といい、階段を下りました。ドアは文字通り冷たく閉じられました。とっさには次の行動が思いつきませんでした。
階段を下りながらとりあえず「戻ろう」と思い直して出発点のヴィクトリア駅へ向かいました。完全に振り出しに戻ってしまいました。
なんとかヴィクトリア駅に着いたのは2時頃だったと思います。僕はまずは寝床を確保しなければと日本から持ってきたユースホステルの案内書と地図を開きました。自分が地図上でどこに居るのかを確かめ、近隣にユースホステルはないかと探しましたが気持ちがざわざわとして落ち着かず、自分の目が地図上であっちこっちへ動いているだけで頭は空っぽでした。
無意識に僕が立っていた数メートル先には切符売り場の窓口があり、その上部には大きな時刻表が掲示されていました。そこに書かれていたたくさんの駅名を目で追いながら、同時に案内書に書かれている地名はないかとぼんやりと考えていました。
知らず知らずのうちに僕は切符売り場の列に入っていました。後ろから少しずつ押されて気が付いたときには窓越しに切符を売る係員氏が僕の言葉を待っている風でした。僕はとっさに前の人が言った駅名を云ってしまいました。ユースホステルの地図には載っていて、何となく頭に入っていたのに加えて、耳でその音を聞いたので口を付いて出てきたのではないかと思います。が、いまだに何故そうなったのか良く分かりません。
係員は「Single or return?片道、それとも往復」と言いました。僕はその意味を良く知りもせず「Single」といいました。
窓口を去って、一瞬、切符を払い戻そうかと思いましたが、どっちみち行く先も決まっていないので心の中で「まあ、いいや」と言って手にした切符をゆっくりと眺めました。
写真はパリのベルシー・ヴィラージュのキャフェ。パリではときどき雪が降るようです。2005年12月
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