僕の45年間ー78 ― 2011/02/07 21:14
僕はとりあえず、と思いながら「Not tomorrow、but next week?明日ではなく来週ではどうですか」と返事をしました。
僕はさっき来たシンナーの充満した工場を通って外に出ました。仕事が決まったらしいということよりも、新鮮な空気を吸ってほっとしました。Aさんは守衛さんと話しこんでいました。僕を見つけて「どうだった?」と聞きました。
シンナーのことを説明して、僕は耐えられるかどうか自信が無いといいました。Aさんは「そりゃ大変だな。けどよ、守衛さんの話しだとここは焼付塗装の工場で奥の方にもいろいろと大きい工場があるってさ。で、どうする?」僕はとりあえずの返事をしてきたことを説明しました。
頭の中ではレストランの皿洗いの仕事では時給が1ドルくらい、この工場の説明では3ドルにはなりそう。Aさんは主任をやっていて5ドル。デンマーク語も英語も話せない僕が3ドルはいい話じゃないかと思っては見てもシンナーの匂いを払拭できませんでした。
駅への途中、Aさんは「じゃ、こうしよう。コインを投げて裏か表かで決めたら?裏が出たら俺が電話をして断ってやるからよ」と提案しました。
彼はポケットに手を入れてコインを一枚取り出しました。そして、こっちが表でこっちが裏だ、と僕に見せてくれました。「じゃ、やるよ」と言ってコインを空中にほうって、すばやく右手で捕まえました。左手の甲に右手を重ねて「いいか」と言いながら右手をはずしました。
彼が右手を左手の甲から外すとき、正直なところ僕はどっちを願っていたのか分かりません。
写真はプラハ郊外のカレルシュタイン城へ行く途中、坂道がきつくて観光用の馬車に乗った際に撮った風景。2004年12月
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