僕の45年間ー61 ― 2011/01/22 20:42
前方に工場らしき建物が幾つも見え初めてもうそろそろかなと思っているとトラックは止まりました。守衛のいる小屋を指して、何やら言われました。僕らは降りろと言われているように思え、ここだなと合点しました。
Thank you, thank youと礼を言いました。トラックはじきに猛スピードで走り去りました。僕らは守衛さんに新聞の切抜きを見せました。雨で濡れた手で大事に持っていたので切り抜きはグシャグシャになっていました。
建物の中に案内され、来客用の部屋に通されました。緊張していました。日本での経験だったら履歴書を最初に出して話しを聞くのはそれからなのでしょうが、何の準備もない、住所不定の外国人旅行者を本当に雇ってくれるのか心配でした。高橋さんも緊張のせいかあまり話しませんでした。
若い女性が入ってきて一枚の書類を差し出し、僕らに書くように言いながらボールペンを渡してくれました。しかし、僕らの目には明らかに英語ではないことが分かりました。困惑した僕らの顔を見た女性は「ネーム」といって書くところを指差しました。僕たちは名前だけを書きました。彼女は書類を持って出てゆきました。
じきに背の高いスーツ姿の男性が現れました。その人に比べて僕らは濡れ鼠のような格好でした。我ながらみすぼらしく感じました。
男性は手元のメモをと僕らの顔を2度ほど見比べて話し始めました。幸い英語でしたから助かったのですが、注意深く聞くと「電話で問い合わせをしたのは女性か?」と言っているようでした。僕らは「イエス」と答えました。男性は「あ、そうか」とでも言っているようで軽く笑い出しました。
外国語は当たり前のことですが、分かったつもりの範囲しか分からないもので、分かっていないところは永遠に、分からなかったことに気がつかないものです。僕ら二人分の力を合わせても英語力には限界がありました。互いに顔を見合わせながら日本語で分かったことを確認しました。男性係員の話の内容を総合し、「分かりました」といって立ち上がるのに5分もかかりませんでした。
写真は2008年11月。アムステルダム中央駅の駅前通り。
何故かアムステルダムへ行くたびに雨に当たります。
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