大坂忠 ＝写真＝Tadashi Osaka's photography

今日はこんな話を聞きました。


　当時はどんなカメラでこれを撮ったんですか。あア、そうですか、アサヒペンタックスＳ２ね。ぼくも使いましたよ。高校生の時にね、うちは自営でしたけどね、親父の仕事を手伝って小遣いをためてね、親父にカメラを買いたいと相談をしたんですよ。そしたら、神田へ連れてってくれたんですよ。そこで当時発売になったばかりのＳ２を勧められて、暗室の機材と一緒に買ったんですよ。足りない分は親父が出してくれました。いあや～、写真を撮るのが楽しかったなぁ。
　高校３年になって受験もしたんです。大学に合格したんですよ。そして、入学金だとか授業料を払う段になったんです。そうしたら親父の会社が倒産しちゃったんです。大学はだめかなと思ったんです。で、親父が言うんです。お前のカメラや引き伸ばし機を売ったら行けるよってね。で、ぜ～んぶ処分しましたよ。
腹がたってね、悔しくてね。それまで撮った作品を全部焼いてしまいましたよ。あの時は悔しかったな。それ以来、カメラのことは考えないようにしていたんです。
　３年前にね、女房にそのカメラの話を初めてしてね、また始めることにしたんです。ペンタックスですよ。やはりね。嬉しかったな。でね、最近、Ｓ２の程度のいいのが見つかったんで、中古でまた買ったんです。これがいいんですよ。見つけたときは、それは嬉しくてね。
　もう退職したから、のんびり写真を楽しみますよ。　でもね、大坂さんみたいに若いころの作品が残っていないのが悔しいなぁ。


彼は少し涙しながらこの話をしてくれました。僕も泣いてしまいました。


今日は台風のせいでお客さんが少ない一日でした。
夜は南川泰三さんのお誘いをいただいて四谷にある「Cafe　コタン」というライブハウスへ出かけました。奥山洸伸の落語を堪能しました。
３０人も座れば満席のようなこじんまりした会場で、それはそれは楽しい夜でした。


写真は四谷の帰りの「新宿２４時」です。