大黑座 =浦河町=2012/12/01 22:34

 浦河町は 『♭北の街では もう悲しみを 暖炉で/もやしはじめてるらしい♭~』で有名なえりも岬から50キロほどのところにあります。
 http://www.town.urakawa.hokkaido.jp/index.html

 この町に「大黑座」という映画館があります。名前からして古びた懐かしさを感じさせる・・・とお思いになりかもしれません。しかし、今年で開業94年の長き歴史を誇り、堂々48席を有する映画館なのです。詳しくは下記のサイトで紹介がされています。
 http://www.cyzo.com/2011/06/post_7623.html

 妻と僕は10時のバスに乗り午後1時半上映開始の「ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳」という作品を観てきました。今日は初日です。
 バスは予定通り1時20分に到着したのですが大黒座までの道を間違えてしまいました。バスの運転手が指差す方向へいくら歩いても大黒座は見当たらずドキュメンタリーの冒頭10分間を見逃しました。よく考えてみたら、運転手氏は多分、この大黑座で映画を観たことはなかったのだろうと思いました。
http://movie.walkerplus.com/mv50630/

 僕はなぜこの作品が浦河町の映画館で上映されるのかと、その因縁にも強い興味を持ち劇場に急ぎました。

大黒座―22012/12/02 22:07

 大黒座は家族経営です。現在の館主は4代目の三上雅弘さんです。そして、運営に欠かせないのが妻である佳寿子さんと、雅弘さんの母親であり亡き3代目館主・三上政義さんの妻である雪子さんです。
 近頃の都市の映画館は大きなビルの中にあります。大黒座はそうではありません。前回の写真のように独立した建物です。外から見ただけではすぐに映画館だとは気付かないかもしれません。派手にポスターが外壁に貼られているわけでもありません。僕らも遠くから目を凝らして「大黒座」という文字を読んで分かったのでした。

 僕は映画館の経営についての知識は皆無です。しかし、札幌のような都市でさえたくさんの映画館が廃業に追い込まれていますからその難しさは容易に想像ができます。僕には人口1万3千人ほどの浦河町で90年以上も営業を続けているのは素晴らしい出来事だと思うのです。その原点は「映画を見ない人生より、見る人生のほうが豊かです」という3代目館主・政義さんが残した言葉に凝縮されているように思います。映画を通して多くのことを学んだ僕はまさしくその通りと言いたくなります。

 さて、その映画「ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳」はこれ以上地味な映画はないだろうとさえ思える作品です。福島氏は90歳を過ぎたいまも反体制の主張を貫く現役の写真家です。生活費に不自由になったときでさえも国からの年金は受け取らないと踏ん張ってきました。氏の活動は「ピカドン ある原爆被災者の記録 1960」から始まり3.11まで及んでいます。下記には89歳の時の動画があります。
http://www.youtube.com/watch?v=kqbdjD0rVJA

 大黒座のファンの一人の女性が強い動機を持って館主三上さんに上映のリクエストをした結果、12月1日から14日までの興業が決まりました。お話を聞いていると地域の人々と共に運営をなさっているというのが伝わってきました。
上映と同時に氏の写真展が館内のあらゆる壁を占拠し行われています。

日本リアリズム写真集団2012/12/03 23:03

  以前にも書きましたが9月に日本リアリズム写真集団札幌支部の立ち上げに関わりました。現在は4名の会員で毎月一回の例会を開いています。来年3月に札幌市資料館で合同の展を開催することが決まっています。
 ★2013年、3月12日(火)~17日(日)朝9時~夜7時
   札幌資料館ギャラリー1・2

 写真を撮る人に限らず、観るのが好きな方や写真批評に関心のある方など入会大歓迎です。地域性もリアリズムという標語にも関係なくお誘いをしたいと思います。お声をかけてください。

 札幌支部のブログがあります。
 http://jrps.exblog.jp/
 ここに僕のたわ言を10回連載させていただきました。題は「写真をもう一度」です。今日で完結しました。お時間があるときにでもお出かけいただければうれしく思います。

 写真はすすき野で見かけた大変にぎやかな女性2人。高校生くらいかなと思いながらシャッターを切りましたが20歳代後半のような感じでした。

映画「人生の特等席」2012/12/04 22:24

 封切映画を観ました。「人生の特等席」です。クリント・イーストウッドがプロ野球の老年スカウトとして登場します。しかし、それは重要ではなく父娘の人間関係が主題です。
 英語の題名は「TROUBLE WITH THE CURVE」ときわめて素っ気の無いものです。この題名からすると野球で「カーブを打てない選手」という程度です。登場するプロ野球ドラフト一位指名の高校生バッターがカーブをうまく打てないという設定ですが、クリント・イーストウッドが人生の変化球にてこずるという含みがありそうです。
 http://wwws.warnerbros.co.jp/troublewiththecurve/

 クリント・イーストウッドは1930年生まれで今年82歳です。僕には1958年のTV連続西部劇「ローハイド」を14インチの黒白テレビで毎週見逃すことなく観て以来の名前で、文字通りの往年の大スターです。いつも馬にまたがり短くなった葉巻をくわえていました。

 僕は徐々に体力や学習能力(もともと大した能力ではありませんが)を失いつつあることを今、経験しています。そんな中、82歳でもなお、こんなに楽しめる映画作品に主演できるのかとただ感心して感動しました。
 昨日の報道写真家・福島菊次郎は90歳でなお、現役です。
僕は何となく、勝手に、ウン、もっと写真を撮りたいなア、撮れそうな気がするなア、という気分になります。

本当にキャパのものなのか?2012/12/14 12:46

  文藝春秋創刊90周年記念である新年特別号(2013年1月号)に写真の記事が掲載されています。

 新聞広告をみて翌日の散歩で・・と思って出かけたものの物忘れが始まったらしく失念。家に戻ってから切り抜きを見て「あ!、しょうがないなア」。翌日改めて近隣の百貨店の本屋へ。さほど大きくはない店ですが、大きな新聞広告が出たせいか平積みでいくつもの山ができていました。今度は忘れる前に散歩の終わりに買うのではなく始めに買いました。

 「戦争報道の歴史に燦然と輝く傑作『崩れ落ちる兵士』―――だがこの作品は本当にキャパのものなのか?」と沢木耕太郎氏が書いています。副題は「世界が震撼するスクープ309枚の一挙掲載」です。
僕はこの新聞広告をみて読まなければ!と思いました。

 今の拙宅に引っ越すときに妻と話したことの一つに「図書館で借りることができる本は自分で買わない」というのがありました。しかし、今回はその禁を破りました。

 僕の一番の関心ごとは、従来からいわれていた「写真1」が本当に撃たれた瞬間の写真なのかどうかということです。また、その背景にある物語を知りたいと常々思っていました。
 今の時代とは違って、カメラの性能は一枚撮ったらフィルムを巻き上げて次の一枚を撮るという全手動式です。また、戦場での撮影済みのフィルムが何人ぐらいの人の手を通って、どれくらいの時間がかかってニューヨークやパリの雑誌の編集者の手元に届くのか想像してみてください。何かドラマがありそうな気がします。

電子書籍小説・玉撞き屋の千代さん―浪速の女ハスラー南川泰三著2012/12/15 11:32

 僕は学生時代に写真を独学していました。しかし、落第点ばかりをとっていた英語を何とかしなければという思いが強くなり20歳のときに写真をあきらめました。そして60歳ころに、40数年ぶりに写真を再開しました。その最初のドキュメンタ写真がこの小説の主人公である千代さんでした。
 学生時代にはムリ、ムリと思っていた写真の個展を初めて開くことができたのは2009年2月(キヤノンギャラリー梅田)でした。題は小説の題と同じく「玉撞き屋の千代さん」でした。僕には生涯忘れることができない個展です。
 
 著者は僕が敬愛する放送作家であり小説家の南川泰三氏です。60歳を過ぎて写真を始めましたという超素人の「写真を撮らせていただけませんか」という図々しい申し出に快く「どうぞ」とおっしゃって下さった千代さんをはじめ著者の南川氏、家族の皆さんには本当に感謝しています。下記に写真を掲載してあります。
 http://www.labofyus.com/osaka_tadashi_pb_chiyosan.html

 さて、撮影に当たりボロボロになるまでその文庫本を読みました。その小説が電子本となり登場しました。「紀伊国屋書店BookWeb」などで購入できます。
 読み始めるのは週末をお勧めします。戦前戦後の時代を生き抜いた千代さんの波乱万丈の人生経験を通じて見える人間愛、哲学、生活の知恵は感動の連続で一気に読み終えたくなる作品です。

保名倶楽部ブログ (千代さんのお店)
 http://yasunaclub.exblog.jp/
紀伊国屋書店BookWeb」
 http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/search.cgi
(電子ブック専用の端末だけではなくデスクトップPCでも読むことができます--念のため)

解き明かすことへの執念2012/12/16 13:11

 先先回、文藝春秋創刊90周年記念である新年特別号(2013年1月号)に掲載されている沢木耕太郎氏のノンフィクション作品を紹介しました。かの有名な報道写真家ロバート・キャパの作品「崩れ落ちる兵士Loyalist Militiaman at the Moment of Death, Cerro Muriano, September 5, 1936)」という一枚についての考察です。ロバート・キャパについて、あるいは報道写真について語られるときには必ずと言っていいほどに紹介され使われる写真です。

 沢木耕太郎はいくつかの疑問を持ち、309枚の原稿で明らかにしようと試みます。その中で氏は撮影現場を特定し、実際に写真に撮られている兵士は銃弾に倒れたのか、などを検証しようとします。和文の題よりは英語の原題がDeathを使っていますから「愛国兵士の死の瞬間」となると思います。つまり、ロバート・キャパは「この兵士は銃弾によって殺された」と言っているのです。
はたしてこの兵士はこの場面で亡くなったのか、あるいは演技だったのか。

 沢木は一度、二度とスペイン戦争の現場に出向き、帰国してはまた疑問がわき、三度スペインへ行きます。そして、ネガフィルムは現存しませんからできるだけ初期に掲載された当時のグラフ雑誌を探し求めてパリへ、ニューヨークへと調査旅行に行きます。初めての掲載誌は76年前のフランスの「VU」誌でその表紙です。
 ロバート・キャパは彼自身の著作物の中では一切この写真の説明をしていないようです。したがって、これまでにも数人の人々が沢木耕太郎と同様な疑問を持ち、解き明かそうと試みていますが明快な結論には至っていません。

 昨日これを読みながら思い出したことがあります。大学生になったばかりのある講座で牧野こうじ(当時、浦和在住の詩人でしたが漢字を思い出せません)という講師の授業で言われたことです。
「諸君、現場を踏むことがどれだけ大事なことか。例えば皆がよく知っている『姥捨て山』について文章を書こうとするなら、その山を探し、登ってみよ。そしたら諸君が書く文章はおのずと活きてくる」という趣旨でした。
 僕は大学というところはこういう授業をする所なのかと感動したのを覚えています。
牧野先生とは何度か浦和の飲み屋でコンパをやりました。

 ちなみにロバート・キャパは映画「カサブランカ」や「汚名」で有名な女優イングリッド・バーグマンと恋に落ちたこともあります。

 ロバート・キャパの簡単な資料
http://sky.geocities.jp/ppp_dot/index1-capa.html
DVDも販売されています。「キャパ・イン・ラブ・アンド・ウォー」
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